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アップルは何を売る会社か?<結論> / 2010年2月11日

Appleという会社は家電やコモディティ商品を売る会社ではないという事を書きたくて、前回は競合と言われる会社について書きました。
今回はいよいよAppleは何を作り、何を売っている会社か?についてです。

Appleが売っているもの、それはズバリ「体験」です。
Appleは、Apple製品を使う事、Apple製品を手に取る事、その「事」自体を価値として売っているのです。

ん〜。これだけじゃワケがわかりませんよね?
もう少し具体的に説明しましょう。

例えばiPod。
MP3プレーヤーはiPodが登場する前からありましたし、iPodが発売された時には「今更こんなに大きくて高価なMP3プレーが売れるはずがない」と酷評されました。

しかし結果はご存知の通り。
ではなぜ売れたのか?それは形がオシャレだったから。iTunes Music Store から簡単に音楽を買えたから・・・。など、細かく見れば色々あるとは思いますが、よくよく考えてみると、その操作が、簡単で洗練されていて、他のMP3プレーヤーでは体験できない楽しいものだったからじゃないでしょうか?

iPhoneもしかり。
従来の携帯電話とは違った見た目のデザインや操作感が、クールに感じられたりおもしろいと感じられたことがこれだけの反響に結びついたと言えないでしょうか?

Macだってそうです。
パソコンを操作して作ることができる成果物を見ると、Macでしかできないということはほとんどありません。そういう意味では機能的にはWindowsとMacの間には大した差はないと言えます。
しかし、MacOSやハードウェアとしてのMacのデザインや操作感には、Windowsにはない、使って楽しい、使っていて気持ちがいい、見ていて格好いい、と思わせる仕掛けがあらゆるところに仕組まれています。
その「楽しい」「気持ちがいい」「格好いい」とユーザーに思わせる事自体がMacの真骨頂であり、存在意義なのだと思います。

前回のブログで、競合といわれる企業が売っているものを考えてみました。
その際、各社が売っているものは「〜するための○○」的な表現で現すことができるものが多かったように感じます。

それに対して、Appleが売っているものは、「〜するのが気持ちいい○○」、「〜するのが楽しい○○」、「〜するのが格好いい○○」といったユーザーが体験した時に感じる”感覚”に訴えるものだと言えると思います。

この違いは、商品の機能やスペック、それで得られる成果物や価格といった、他社が競争の基準と考えている土俵とは全く異なったフィールドで、Appleが商売しようとし考えている違いだとは言えないでしょうか。

Apple の製品は必ずしもハイエンドなスペックを持っているわけではありませんし、最先端の技術を駆使しているわけでもありません。
ユーザーに今までにない体験/アップル製品らしい体験をさせるための仕掛けとして、過不足ない技術やデザインが、黒子のように製品に組み込まれています。
すべてはユーザーの体験をいかに実現するか?が基準として徹底されているように感じられます。

不景気な世の中で、Apple 社の製品が売上を伸ばし、シェアを伸ばしているは、消費者がApple社が提案する「体験」を評価し、お金を出しているのだ、と言えるのではないでしょうか。

Appleが売っているもの、それは「今までにない、アップルらしい体験」。これが結論です。

※補足
逆に言えば、Appleは「今までにない体験」を生み出し続けなければならず、「アップルらしい体験」を維持するためには、他社と異なる方法をとり続けないといけないわけです。
このことが、Appleが他社と協業できないとか、Apple自体が標準にはなりえないというジレンマにもつながるのだと思います。

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